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一般リフォーム施工事例

S邸 京都市右京区

破損が激しい屋根の貼替えと全体の補強

築200年以上の京町屋奧の土蔵は
現場は京都市中京区の大きな商店街に面した元呉服店。「うなぎの寝床」と俗に呼ばれる典型的な京町屋の、一番奥に建っている築推定200年以上の土蔵です。施主の当主によると、戦後60年、柱を補強したくらいで大きな補修工事はしていないとのこと
  • 土蔵は全体に東北角を中心に沈み、東のほうに大きく傾いていました
  • 長年の雨もりで屋根瓦の損傷が激しく、軒の部分で折れていました
  • 南面と北面の土壁が外側にふくらみ屋根との取合に大きな隙間があいていました
  • 2階窓上の庇(ひさし)の損傷も激しく、壁に塗られていた漆喰(しっくい)もほぼはがれ落ち、全体として相当老朽化してりました
施主の希望は
  • まず状況を診断してほしい(特に東崩れないか調べてほしい)
  • 既存の蔵を保存するにせよ解体するにせよ、長もちさせる最前の方法を示してほしい
  • 蔵を残す場合、できれば傾きを水平に戻してほしい
  • 人が住むわけではないので費用はできるだけ抑えてほしい
施主の希望に対し
  • 蔵を解体・撤去し、スチールの物置を設置する
  • 基礎をコンクリートで補強して不動沈下を防ぐ
  • 屋根瓦と土を撤去して軽い材料で屋根を葺き替える
以上、3点を提案しました
NPO法人・古材バンクの会にも視察と調査を依頼、町屋に詳しい建築家のアドバイスも受けながら協議を重ねましたが、最終的に施主は蔵を残す方法を選択されました
[2]の基礎の補強と、[3]の屋根の葺き替えを同時に行うのが理想ですが、予算のこともあり今回はより差し迫った修繕、屋根を軽い材料に葺き替え、雨もりを止めて骨組みを楽にしてやろうと決めました
施工者からひとこと…
商店街の中に建つ京町屋、それも築200年以上の土蔵という特殊な状況で、やりがいもありましたが施工中はいろいろな困難に遭遇しました
まず、多くの作業を手作業で行わなければならない苦労、それにともない労務費もかさみました。施主も思いは同じで、解体も考えられたようですが解体・撤去は予想以上に費用がかさむことも、改装を選ばれた理由の一つだったと思います
結果、現状維持を目標にした改装だったため外観の修復や古材の利用などにはしっかり手が回りませんでした
施主の「長年見慣れた蔵がなくなるのは忍びない」という気持ちは大切にしたいと思いました。施主の希望と限られた予算のどこで折り合うのか…、改装にはついてまわるジレンマですが今回は特に悩みました
建物が傾いたのは地盤が建物の重みに耐えきれず、不動沈下したしたものが主な原因と思われますが、施主の古いものを残したい気持ちには、今後のメンテナンスでしっかり応えていきたいと考えています
Befor
蔵の平面図
・前面道路は商店街のため14時から午前零時までは車が通行できません。まわりの商店が店を開く午前10時ごろまでしか、実質は工事車両の進入や駐車ができません
このため午前10時までに材料・資材の搬入、廃材・廃土などの搬出を、約40m奧の蔵から主家の通り庭を通ってすべて手作業で行わなければなりませんでした
蔵の断面図
・壁の土も30cmほど厚みがあり、柱との間が広がっていて上塗りの漆喰(しっくい)がはがれ落ちていました
・蔵は主家、中庭をはさみ道路から最も遠い北にあり、東側、北側、西側とも他家の敷地でした。施主である当主によると、戦後60年、柱を補強したくらいで土蔵は全体に東北角を中心に沈み、東のほうに大きく傾いていました  
・長年の風雨で屋根瓦の損傷が激しく各所で雨もり、屋根の土台は一部軒の部分で折れていました。これは土蔵であることと屋根瓦を葺(ふ)くのに土を20cmほど敷いていたため、雨が降っても水分が内部まで浸透せず雨もりに気付かなかったためです
結果、雨が降るたびに土内部に水分がたまり、もともと重い屋根がさらに重く柱や基礎にのしかかっていました
・屋根瓦の風切り瓦を止めるため犬釘とよばれる専用のクギを打ち込みますが、水が入らないように漆喰で丸く塗ってありました(右)。それも長年の風雨、日射しなど自然環境にさらし続けて風化、犬釘まわりから水が侵入、2本ともクギが腐って瓦がのっているだけという個所もありました ・隣家からは見えるけれども主家などからは見えないため、足場をかけたときに施主に見ていただきました
施主も瓦の暴れっぷり≠ノ唖然とした様子
・不動沈下のため柱が梁(はり)から下がっています。壁土も下がっています ・屋根組の様子。大きな丸太の棟木を合掌で支えています。白い柱、コンパネなどは10年ほど前に柱を受け直し補強したもの ・蔵1階床下の様子。基礎は御影石、白い束は10年前に補強したもの。床下の土はけっこう乾いていた
施工途中
・右は建物の「方除(ほうよけ)」の御札、中央は工事中の安全を祈願した御札。この二つは建物2階の柱にはり、清めの砂(3点とも城南宮で購入)は建物の四隅と床下に撒き清め、さあ工事開始
・屋根瓦と土を手と小さなスコップ、ちりとり、箒などで撤去している様子。瓦を1枚ずつはがして下ろし、土は袋に入れて主家の表土間まで運び、翌朝10時までの早朝にやってくるトラックに積んで捨てました。屋根の土の厚みは約20cm、昔の職人の手間ひま惜しまぬ仕事ぶりと「土蔵は耐火と防犯を兼ねた大きな金庫」という商人の考えを目の当たりにしました   ・厚さ30cmほどの壁土と屋根の取合。壁土が外側にふくらみ屋根と離れていました。その隙間は最大で10cm近く ・屋根に土が乗っている状況。野路板は雨水がまわって表面こそ傷んでいましたが、板に厚みがあり内部の天井板を兼ねているため残しました
・2階の窓と庇(ひさし)。庇を支える土の部分が土壁からはがれ始めていて放っておくと庇全体が崩落するおそれがありました
・新しく屋根を葺くため鉄骨で小屋組をして内部の棟木に屋根の重みをかけないよう、南北の軸組面から建てて鉄骨合掌で屋根の重みを受けるようにしました
・鉄骨屋根に野路板を張ったところです ・新しい屋根と古い屋根(天井板)の間に断熱材グラスウールを敷き込みました ・壁土が外側にふくらみ屋根と離れていた南北の壁土の隙間の広がりを締め、今以上に広がらないように内側と外側、両面に水平方向に鉄骨を当ててビルとナットで締め付けました(蔵2階部から撮影)
After
・屋根はカラーベスト葺き、軒裏の隙間は黒系のカラー鉄板で囲いました。今回の工事で屋根の重量は施工前の4分の1ほどになっています ・カラーベスト葺き屋根の様子を西から東向きに撮影
・窓上の庇は下地を鉄骨にかけるなど補強し以前の瓦をそのまま葺き直しました ・風雪に耐え、家内の安全、商売繁盛を見守ってきた既存の鬼瓦(東面)。鬼瓦は2面とも蔵内部に残してあります

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